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NHK関西ラジオワイド「季節の健康」(4月5日放送分)

テーマ:「悩みの種――痔」

Q1.痔と言いますと、おしりの病気ですが、痔でお悩みの方は多いのですか。
A1.はい、一説では日本人の3人に1人は、痔で悩まれたことがあると言われています。実際、医療機関には、毎日多くの患者さんが来られます。そのほかにも、受診をためらわれたり、病気を我慢されている方も相当いらっしゃるのではないかと思います。

Q2.たしかに、医療機関への受診をためらう方は多いかもしれませんね。
A2.そうですね。患者さんの中には、「何年も前からおしりの具合が悪く、ずっと自分一人で悩んでいましたが、今日は思い切って診察を受けに来ました」とおっしゃる方がたいへん多いですね。

Q3.なるほど。では、初めに痔の原因や症状について教えてください。
A3.はい。痔は、便秘や下痢などによって、肛門や直腸の粘膜に長いあいだ強い力や刺激が加わること、また、長く同じ姿勢を続けることなどでおしりのまわりにうっ血が起こること、などが主な原因とされています。その結果、排便時に出血したり、おしりに痛みを感じたり、あるいは、肛門近くに急に腫れ物ができたり、できものが出たり引っ込んだりするような症状が現れます。

Q4.痔と一言に言っても、血が出たり、痛かったり、できものができたり、症状も色々あるのですね。
A4.はい。痔には種類があり、主に、痔核、裂肛、痔瘻という3種類に分かれます。そして、更にこまかく分類されています。

Q5.痔核、裂肛、痔瘻ですね。
A5.はい。最も多いのは痔核で、よくイボ痔と言われるものです。痔の約半数が、この痔核で、イボのような腫れ物が、肛門近くにできるものを外痔核、腫れ物が奥のほうにできるものを内痔核と言います。外痔核は、通常、痛みを伴いますが、内痔核は逆に痛みがほとんどなく、出血や、腫れ物が肛門の外へ出てくることなどが診断のきっかけになることが多いです。

Q6.では2つ目の裂肛はどうでしょうか。
A6.裂肛は、切れ痔とも言われます。先ほどの痔核に次いで多く、排便する時のいきみや硬い便によって肛門の奥に切り傷ができて、強い痛みを感じたり、出血したりします。また、慢性化すると肛門が細くなってしまう場合などもあります。

Q7.では、3つ目の痔瘻とは、どういう状態をいうのでしょうか。
A7.細菌が肛門の少し奥から侵入し、細菌感染が慢性化して、長いあいだ肛門のまわりから膿が出る状態を痔瘻と言います。

Q8.腫れ物がどこにできるかで痛かったり痛くなかったり、また、膿が出るものもあって、それぞれ症状に特徴があるのですね。医療機関へ受診した際には、どのような治療が行われるのでしょうか。
A8.イボ痔といわれる痔核や、切れ痔と呼ばれる裂肛は、まずは、飲み薬や、おしりに直接注入する薬を用いて、症状の改善に努めます。同時に、便秘や下痢、おしりのむくみの原因となるような生活習慣の改善も必要です。しかし、それでも治らない場合は、外科手術が必要となります。また、痔瘻では、膿の出る道筋を手術で完全に取り除くことが重要です。

Q9.手術をする場合は入院が必要になるのでしょうか。
A9.そうですね。しかし最近は、新しい治療法によって、案外簡単に治せることも多くなっています。例えば、腫れ物が肛門のそとへ出てくるような内痔核が、薬で治らない場合は、以前は入院して手術を受けることが普通でした。最近は、特殊な薬剤を内痔核に直接注射することで治せる場合も多く、治療効果も外科手術と同じぐらいになって来ています。

Q10.負担の少ない治療で治すことができるのは、痔で悩んでおられる方にはたいへんな朗報ですね。
A10.そうですね。以前は、薬では治らず、入院して手術が必要であったものでも、近くの診療所で随分手軽に治療できるようになってきていると思います。

Q11.痔にならないためにできる工夫などがあれば教えてください。
A11.まずは、便秘や下痢を起こさないように食事や生活習慣を見直すことが大切です。また、おしりのうっ血を起こさないように、長い時間、同じ姿勢を続けないよう注意してみてください。

Q12.最後に痔にお悩みの方に、何かメッセージをお願いします。
A12.私が皆さんに一番お願いしたい大切なことは、おしりの具合が悪いなと思われた時は、ためらわず、早めに医療機関を受診してくださいということです。おしりの病気では、診察を受けることを恥ずかしいと思われ、受診をためらわれることが多く、なん年もお一人で悩まれたり、辛抱されたりしている方が相当いらっしゃいます。しかし、我々胃腸の病気をみる医者にとって、おしりの診察は、患者さんの顔色や表情を拝見することや、聴診器を当てることなどと全く同じ感覚で毎日行っていることです。そして、長いあいだ悩まれた後に受診された患者さんは、「こんなすぐに治るんやったら、もっと早よ来たらよかったわ」とよくおっしゃいます。ですから、皆さんには、少しでも気になる症状があれば、どうぞためらわずお近くの肛門外科や胃腸内科などをお訪ねいただきたいと思います。

 

NHK関西ラジオワイド「季節の健康」(4月19日放送分)

テーマ:「それって本当に痔ですか?――血便をきたす病気について」

Q1.前回、痔の症状や治療についてお話しを伺いしました。この中で、血便は痔の症状の一つであるとお聞きしましたね。
A1.はい、そうでした。痔になれば、血便が出ることがあると、ご存知の方も多いかと思います。おしりの病気は、恥ずかしさから受診をためらうことが多いうえに、実際に血便が出たときに、「あっ、これは痔だな」と自己判断されて、医療機関を受診されないケースも多いのです。

Q2.血便の症状は、痔だけではなく、他の病気の可能性もあるということでしょうか。
A2.はい。血便は、大腸などの消化管からの出血が原因のこともあり、痔以外の病気の可能性があります。そのまま放置すると、治療が遅れる場合もあります。

Q3.それは少し注意が必要ですね。それでは、まず、血便とはどういうものかについて、もう少し詳しくお教えください。
A3.はい。血便は、消化管からの出血が原因で、赤い便がでる状態を言います。消化管とは、口から肛門までの食べ物の通り道のことで、口から順に、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門へとつながっています。出血で便に血が混じる場合は、黒いタールのような便と、赤い便が出る場合があります。黒い便は、入口に近い胃や十二指腸からの出血が、胃液で酸化され黒く変色したものです。一方、皆さんが痔と間違いやすいものは、赤い血が出る「血便」です。これは、消化管の中でも出口に近い大腸や肛門周囲からの出血によるものです。

Q4.胃や十二指腸のあたりで出血すると黒い便が出て、大腸や肛門などから出血すると赤い便が出る「血便」になるということですね。
A4.はい。更にこの血便の状態をよく観察すると、もう少し詳しく出血している場所を推定することもできます。例えば、便の表面に血液が付着したような状態は、直腸など肛門の近くからの出血が多く、血液が便の中に混じり込んでいるような場合は、大腸でも比較的小腸に近いところでの出血が多いのです。また、小腸からの出血の場合もあります。

Q5.「血便」とひとことに言っても、出血している場所は広い範囲で考えなければならないのですね。では痔のほかに、どのような病気の可能性が考えられるのでしょうか。
A5.まず、発生頻度が高いことや、悪性という点においても一番注意をしなければならないのは、何と言っても大腸がんです。血便が出た場合は、直腸がんを含めた大腸がんをしっかりとチェックしなければなりません。また、がんの中には、肛門管がんと言われる、痔と全く同じ場所に発生し、血便だけではなく、時には痔によく似たできものをご自分でも触れるようながんもあります。このような場合は、余計に痔だと自己判断しがちになりますので注意が必要です。

Q6.自己判断して、がんを放置することにならないように注意しなければなりませんね。がん以外の病気もありますか。
A6.はい、実はたくさんあるんです。例えば、潰瘍性大腸炎という病気ですが、これは免疫が過剰に反応することで大腸に、いくつもの潰瘍ができる病気です。血便に粘液が混じることが多く、発症年齢も30歳台がピークと若いことが特徴です。同じく免疫異常が関与する病気としてクローン病もあります。前回お話した痔瘻がクローン病の症状であることもあります。また、腸管の血流障害が原因となる虚血性腸炎は、50歳以上の方に多く、突然血便になり、腹痛を伴うことも多いです。この虚血性腸炎は高血圧やコレステロールが高いなどの持病がある方が多いですね。

Q7.病気や発症年齢も幅広いですね。
A7.そうですね。このほかにも大腸に憩室という小さな膨らみができ、そこから出血する場合もありますし、細菌感染やお薬の影響で血便をきたす場合もあります。また、最近では新しい検査方法で、小腸の病気を発見できることも増えています。

Q8.実際に血便が出て医療機関を受診する際に、医師に伝えた方がよいことなどはありますか。
A8.そうですね。血便を見たら、我々医師も、多くの病気の可能性を考えながら慎重に診断しなければなりません。受診される際には、血便がいつから始まり、どんな状態で、どれぐらいの量なのかとういことに加えて、今までの病歴や、服用中のお薬なども伝えていただけると、とても参考になります。

Q9.血便には、痔以外にも、がんなどの大きな病気を含め、様々な病気の可能性が考えられるということですから、とにかく自己判断せず、まずは医療機関を受診してみることが大切ですね。
A9.はい、是非受診してください。

Q10.病気が進行する前に、早めに気付くこともできるものなのでしょうか。
A10.そうですね。今回お話ししたような、目で見て明らかにわかる血便が出る前に、病気を発見することもとても大切です。特に大腸がんでは早期発見が重要です。最近では健診でも、便潜血検査を行うことが多くなっています。これは、便に含まれる目に見えないほどの微量な血液を、高い感度で検出することができる検査です。大腸がんの早期発見に非常に有効です。皆さんには是非受けていただきたいですね。

 

NHK関西ラジオワイド「季節の健康」(8月5日放送分)

テーマ:「ジェネリック医薬品について」

Q1.ジェネリック医薬品という言葉は、私たちも、最近よく耳にするようになりましたね。今日は改めて、このジェネリック医薬品とはどういうものかについて、黒岡先生 お話しいただけますか?
A1.はい、このジェネリック医薬品とは、医師が処方するお薬の中で、後発医薬品と呼ばれるものです。後から発売されたお薬という意味ですね。これに対して、新しいお薬として、先に発売されるものを先発医薬品と言い、区別されています。

Q2.処方薬には、先発医薬品とジェネリック医薬品の2種類があるわけですね。それではなぜ、そのように、先に発売される薬があったり、後から発売される薬があったりするのでしょうか。
A2.そうですね。まず全く新しい薬を生み出すには、数百億円から一千億円を超えるような膨大な開発費と、有効性や安全性を確認するために10年から20年という長い年月が必要とされています。ですから新薬を開発した製薬会社は、発売後しばらくの期間は、特許権で守られ、独占的にその新しい薬を販売することができます。しかし、やがて、この特許の期限が切れると他の製薬会社もその薬と同じ成分の薬を製造販売することが許されます。需要の高い薬であれば、一斉に数十社が製造販売を開始するようなこともあります。これが、まさにジェネリック医薬品というものです。

Q3.なるほど、新しく開発された薬の特許が切れたあとに作られる薬が、ジェネリック医薬品と呼ばれるものなのですね。では、このジェネリック医薬品は、我々にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
A3.それはなんと言っても、価格が安いことなんです。多くの場合、先発医薬品の半額に定められています。

Q4.お薬の価格が半額ですか。それは、患者さんにとっては有り難いことに思えますが、なぜそんなに安い価格が可能になるのでしょうか?
A4.そうですね。ジェネリック医薬品を作る会社は、先ほどお話したような、新しい薬を作るための巨額の開発費や長い年月を費やす必要がないことが主な理由と言われています。

Q5.では、ジェネリック医薬品は先発医薬品と価格以外は全く同じものと考えて良いのでしょうか?
A5.実はそこが少し難しいところです。全く同じかと言われると、そうではありません。むしろ、違うものと考えた方がよいかもしれません。

Q6.それはどういうことでしょうか?
A6.薬というものは、原薬と呼ばれる主成分とそれを薬の形にするための添加物によって構成されています。先発医薬品とジェネリック医薬品は、この原薬の成分は同じとされていますが、当然その原薬を作る企業や工場は異なります。特にジェネリック医薬品の場合は、原薬の生産拠点が、中国やインド、韓国などの外国の比率が非常に高いと言われています。更に薬の製造に関する特許の関係上、先発医薬品と同じ添加物を使用することや、同じ作り方をすることができません。ですから、患者さんも服用されるときに、薬の色や形、味などで違いに気づかれることがあるかと思います。

Q7.要するに、主成分は同じとしても、その他の成分や作り方は異なるということですね。
A7.その通りです。

Q8.ではこの違いによって、何か不都合なことはあるのでしょうか?
A8.もちろん、ジェネリック医薬品も、先発医薬品の時よりも簡略化されているとはいえ、国の審査と承認を得て販売されるお薬です。先発医薬品から切り替えても一般的に問題はありません。しかしながら、患者さんによっては、その違いから、有効性に差が生じたり、体質に合わないような反応が起こる可能性は否定できません。ですから、患者さんにとって大切なことは、同じお薬と聞いたから、自分の体に違う反応が出るはずがないなどと思い込まないことです。心配なことがあれば、すぐに主治医に相談して下さい。

Q9.なるほど、先発医薬品からジェネリック医薬品に切り替えるときには、念のために自分の体調の変化には注意しておいた方が良いようですね。
A9.おっしゃる通りです。

Q10.ところで、最近、患者さんのところに、健康保険組合や市町村などから、「ジェネリック医薬品に切り替えると、お薬代がこれだけ安くなります」というお知らせが届くことがありますね。
A10.そうですね。これは、医療費を支払う側である各団体が、医療費を抑えるために患者さんにジェネリック医薬品への変更を促しているものです。確かに、そこにはジェネリックに変更した場合の参考的な差額が書いてあります。しかしこれはあくまでもお薬代だけのことです。お薬代は患者さんの医療費の一部に過ぎませんので、この通知に従ってジェネリックに変更することで、逆に医療費の総額が増加してしまい、患者さんにかえって多くの負担額が生じる場合もあります。例えば、ジェネリック医薬品を希望されたことで、院内処方が院外処方へ切り替わった場合などには、よく起こることです。これは、院外処方の場合には調剤薬局に支払われる種々の費用が加算されるためです。
このように、このお知らせに従ってジェネリック医薬品に切り替えることが、患者さんにとってメリットがあることかどうかは、個々の患者さんの状況によって異なります。ですから、患者さんは、ご自身にとってどうすることが最も良いのかをしっかりと考えることが重要です。

今日のお話から、ジェネリック医薬品には、その価格が安いことにより、医療費の削減に役立つなどのメリットがあることが分かりました。しかし一方では、我々一人ひとりにとって、どういう薬の選び方が一番良いのかについては、じっくりと考えることが大切であることも分かりましたね。

 

毎日新聞 2017年2月17日掲載「ご近所のお医者さん」
おしりのはなし ―恥ずかしがらず受診を―

 皆さんは、おしりの具合がよくないなと思われることはありませんか。例えば、排便時に出血したり、痛みを感じたりすることはないでしょうか。肛門近くに急に腫れ物ができたり、できものが出たり引っ込んだりするようなことはありませんか。これらは、おしりや大腸の病気かもしれません。
 おしりの病気の代表は、やはり痔です。痔には種類があり、主に、痔核(じかく)、裂肛、痔瘻(じろう)に分けられ、それぞれ更に細分類されています。最も多いのは痔核で、よくイボ痔と言われます。腫れ物がおしりの外側にできる場合は痛むことが多いですが、内側の場合は痛みがなく、下血や肛門外への脱出をきっかけに診断されます。裂肛は、切れ痔とも言われ、排便時のいきみや硬い便が通過することで肛門の奥に切り傷ができ、突然の痛みや出血を伴います。また痔瘻は、細菌が侵入して化膿(かのう)し、長期にわたって肛門内外から膿が出る状態を言います。
 これらの痔は、生活習慣の改善や薬の使用で治ることもありますが、手術を要することも少なくありません。しかし、最近では新しい治療法により案外容易に治せることが多くなっています。一方で、痔の症状は大腸がんや肛門管がんなどの悪性疾患の症状とよく似ています。また、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患が隠れていることもあります。おしりに不具合がある時は、これらの重大な病気を見逃さないことも重要です。
 おしりの病気では、患者さんは診察を受けることを恥ずかしいと思われ、医療機関への受診をためらわれがちです。しかし、消化器疾患に携わる医師にとって、おしりの診察は、患者さんの顔色や表情を拝見することや、聴診器を当てることなどと全く同じ感覚で毎日行っていることです。そして、長年悩まれて受診された患者さんは、「こんなすぐに治るんやったら、もっと早よ来たらよかった」とよくおっしゃいます。
 少しでも気になる症状があれば、どうぞためらわずお近くの肛門外科や胃腸内科などをお訪ねください。

 

毎日新聞 2018年1月20日掲載「医療とともに」
冬場になりやすい痔 ―腸いたわり、おしりを冷やさない―

 他人に相談しにくい痔など肛門周りの病気。寒さが厳しいこの時期は、症状が出やすくなるという。黒岡醫院(大阪市住之江区)の黒岡正之医師(55)に話を聞いた。
 ――肛門の病気といえば、やはり痔が一番に思い浮かびますね。
 はい。痔は最も多い肛門の病気です。肛門周辺は血流が豊富な場所でうっ血を起こしやすく、また排便による力や刺激を直接受けることが発症の原因となります。痔には、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)という主に三つの種類があります。
 痔核は肛門粘膜や皮膚が排便による力でたるみ、そこにうっ血が加わることにより、いぼ状に膨らむもので、痔の中で最も多いものです。肛門の内側にできる内痔核は、痛くないのですが出血することが多く、外側にできる外痔核は痛むことが多いです。これらは悪化すると脱肛になることもあります。
 切れ痔は排便やいきみにより肛門粘膜が傷つくもので、比較的女性に多い。また、痔ろうは細菌感染により、肛門の内側や外側から膿が出る状態で、男性に多い傾向があります。
 ――治療法は?
 まず飲み薬や坐薬で、腫れや痛み、出血を抑える治療を行います。薬による治療で効果が不十分な場合は、手術となりますが、最近は、例えば内痔核には、薬剤を直接注射する「内痔核硬化療法」を行うことが増えています。これは診療所などで短時間に日帰り手術として行え、しかも従来の入院が必要な手術に匹敵する効果が期待でき、おすすめです。
 患者さんが何年も受診をためらっていたという話をよく聞きますが、他の病気の可能性や、痔でも病状が進行するほど治療が複雑になることもあり、早期の診断と治療が肝心です。
 ――血便はよく痔の症状だと言われますが?
 血便は、主に肛門や大腸からの出血で、赤い便が出る状態です。痔が原因のことも多いのですが、痔とは限りません。一番注意しないといけないのは大腸がんの可能性です。
 血便が出た場合、その色調や血の混じり方も診断に重要です。最近はスマートホンなどで写真を撮って来られる方もいらっしゃいます。診断の参考になります。
 ――痔にならないために注意すべきことはありますか?
 痔は便秘や下痢などの便通異常や長時間の立位や座位が原因となることが多く、生活習慣を変えることが予防のポイントになります。水分摂取を心掛け食物繊維の多いものを食べること、長時間同じ姿勢でいないことやお尻を冷やさないことなどを心掛けてください。また少しでも気になる症状があれば、とにかく恥ずかしがらずに早く受診することが大事です。

 

国際グラフ 2011(平成23)年7月号
豊富な知識と最先端医療をダイレクトに還元。患者さんに優しい診療を実践!
インタビュアー:大仁田 厚さん